ペンネーム

2016年1月、ボーダーポロというペンネームを捨てた。初めてこのペンネームでラジオに投稿したのは2012年の5月だった。これはメールボックスに残っている分なので、それ以前に投稿フォームから送る形式のラジオには送っていたかもしれない。そんな3年半以上使ったペンネームを捨てた。

 

いくつかある理由の一つとして、読みづらさが挙げられる。発声しづらいバ行が「ボー」ときてこれもまた濁音の「ダー」、ようやく音の澱みから解放されると思いきや今度は「ポロ」と拍子が抜ける土台のない、声に出さないために作られたペンネームだと今になって思う。現に、いくつかのラジオで採用してもらうようになっても、爆笑問題太田光伊集院光は読みづらそうにしていた。聞きながら僕は「ごめんね……読みづらいペンネームで本当にごめんね……僕がもっと読みやすい名前だったらどもる時間でもう1枚くらい読めたのにね……」とおばあちゃんのような気持ちで耳はラジオにかじりつきながら頭を抱えていた。しかし次第に採用を重ねるにつれ、彼らは名前に詰まることが少なくなってくる。そのことに気付いた時が本当に嬉しかった。週に何枚も採用されることがあれば「最近よくくれるよな」など声をかけてくれることがあるが、何十枚も送って1枚面白いものがあればラッキー程度の僕にはそんな声がかかることがない。それでも、ボーダーポロの読み方の上達を「パーソナリティが僕を認識している」と自分を勘違いさせる要因になっていたのは確実だった。そんな自己暗示ができていたのは、ある意味今はもういない「ボーダーポロ」のおかげかもしれない。

 

2015年の末、ペンネームを変えようかと思い立つ。新ペンネームの条件は、・ボーダーポロだったころに憧れていた「○○な××」のように単語ではない2節以上の言葉の組み合わせ・深みのある名前・語呂が良いの3つ。この中では一番”深み”を重んじた。僕は以前ラジオで聞いた「おちんちん教授の思い出」というペンネームが忘れられない。すべてのペンネームの中、もといフレーズ、言葉の中で最高峰と今でも思っている。到底これは超えられないけれど、情景の思い浮かぶ名前にした。ペンネームの変更が功を奏したのか、2016年、今までより採用のペースが多くなった。ボーダーポロだったころのダサさがなくなったように思う。2015年でボーダーポロは死んだ。

 

2016年3月28日未明、ラジオから突如「ボーダーポロ」の最期の声を聴いた。いつまでもたえることなく友達でいようコーナー内での事、何カ月も実施されないが当たり前のこのコーナーで2015年8月に送ったものが今になって採用されたのだった。せっかくなら新しいペンネームの方で採用されてた方が認知もしてもらえたのにと思うとともに、ボーダーポロで初めて採用されたのもこのコーナーと思い出した。「ボーダーポロ」は友達で始まり友達で終わる、最高の死に方として少なくとも僕の心には残っている。